ツタエル、あなたを生きる意味 / INTERVIEW 飯尾彰悟

当時の夢ですか?
それは、すごく明確で、

◻ 営業で「エグゼクティブ」の地位につく
◻ 年収5000万
◻ 可愛い女の子の秘書をつける
◻ 良い車に乗る

というものでした。

でも今は、自分のビジョンが世界で体現されている様子を眺めながら、会社で一番新人の女の子のグチを、「うんうん」とやさしく聞ける社長になれたら、最高ですね。

そう語るのは、株式会社イキカタ代表の飯尾彰悟さん。
なんでもこなしてきた優等生、会社でもトップ営業マン。の人生に訪れた突然の挫折と、本当に大事にしたいことを見つけていくその過程。
視界が広いアイディアマンだからこそ抱える苦悩と、彼だからこそできること。そのバランスの狭間で揺れながら、人生の本丸に迫っていくリアルをお伝えします。


なんでもできたけど、
見えていなかったもの

━━ 学校ではずっと成績優秀。部活のバスケットでは、国体にも出場。2社目のソニー生命時代でもメキメキと成績を伸ばし・・・。そんな飯尾さんにも、挫折が訪れ、人生観が変わった時期があったとか。その辺からお話いただけますか。

挫折、なんて言うとおこがましいですが、28歳に訪れた気づきを、7年経った今でも引きずっている感じはあります。きっかけは、先輩に連れていかれた、自己啓発セミナー。そういうのに参加しても、割と器用にこなす方だったので、いつも通り発表したりしていました。すると、「そんなんじゃなくて、いいから。(もっと、本当のところを語って)」みたいなフィードバックがバシバシと来たんですね。それは一度や二度ではなく、ずっとその調子。自分でも、どう振る舞えばいいかがわからなくって、珍しく、本当に行きたくない、と思うこともあったんですが、とりあえず行き続けました。

その時の衝撃がきっかけとなって、カウンセリングとか、研修とか、かなりいろいろなものに投資して、自分を見つめる機会を持ちました。その中で気づいていったのは、自分の動機の多くが、「母親の期待に応えよう」として生きてきた。ということだったんですね。

僕には、2歳下の妹がいるのですが、僕は妹が生まれたタイミングで、母親を取られてしまうことへの恐怖を感じたみたいなんです。母親が言うには、妹が生まれたタイミングで、僕が「妹を捨ててきて」と懇願したり、それが無理だとわかると、夜にわざわざおばあちゃんの寝床まで寝に行っていた、と言っていました。早くも訪れたプチ反抗期、といったところでしょうか(笑)

しかしその作戦は、うまくはいかなかった。そこで僕は、「とにかく母親の期待に応えることで、母親の愛を勝ち取ろう」としました。実際には、妹が非常に手のかかる子だったので、優等生の僕は安心して放っておかれてしまった訳ですけどね・・・(笑)

コミュニケーション量が
世界を救う

━━ 現在も、保険の営業を続けられつつ、全然違う分野でのサービス(夫婦向けアプリ)の立ち上げも進めていらっしゃいますよね。その辺について教えてください。

そうですね、そうやって自分の内面を見つめたり、またそこで得た新しいレンズを元に世界を見ている中で、明らかになっていったことがあります。それは、「コミュニケーションが増えれば、多くの問題は解決するんじゃないか」。という視点です。もちろん、コミュニケーションの「質」も大事だと思うのですが、まずは量だと思うし、量が増えることで得られる安心や信頼ってあるんじゃないかと思うんですよね。

そう感じた背景として、大きく2つの実体験があります。一つは、保険の営業をしていて感じたこと。二つ目は、僕自身が妻との関わりの中で感じていることになります。

一つ目の保険の営業での実体験としては、みなさん意外と、大事なことを伝えられていない、あるいは話せていない、っていうことなんですね。

僕が経営者である旦那さんと話をしていて、「もしものことがあった際、残された奥さんに対してどんな想いを伝えますか」って質問をすることがあります。その回答を奥さんに伝えると、「まぁ、嬉しい・・・。」ということで喜ばれることがある。だけど普段はそういう感謝とか、想いとかって伝えていないんですね。

また、例えば結婚の時にお互いが考えていたこと、子どもの教育、将来の設計など、僕が入ってきっかけができたことで、初めて話をするような話題もある。お客様から、「飯尾さんが、間に入ってくれたので話すことができた」と言われて嬉しい気持ちもありますが、保険の検討以外でも、こういうことを話せる機会が増えるといいなって、感じています。

あと大きいところとしては、僕の妻って、あんまり僕に話をしてこない人なんですよね。ちゃんと聞こうとしても、なかなか話をしてくれない。もちろん、子どもも3人いて、すごく仲良しではあるんですが、あんまり自分の希望とか、望みとかは話してくれないことへの不安があります。

僕としては、やっぱり愛する人を幸せにしたいし、そのために相手の希望を知りたいという気持ちがあるので、もっと気軽に話ができるようになればいいな、と思っています。


━━ その「コミュニケーションが増え、より関係性も深くなる」ことを目指して現在アプリを開発中ということですよね。アプリについて教えてください。

はい、アプリについては、名前は「リシル(=Re知る)」で、コンセプトは、「今、再び知り合う」です。関係性の中で、「近いから、知らない」ことって結構あると思っていて、このリシルを通じて、お互いへの理解が深まっていけばと考えています。

別に、手段としてアプリにこだわっている訳ではないのですが、研修への参加や、プロを雇う、といったことは非常にハードルの高いことなので、できるだけハードルを低くし、ゲーム感覚で楽しくコミュニケーションが取れたらと考えています。

詳細については、まだまだ詰めて行っている段階ですが、アプリの中で、相手に対して感じたことを蓄積していきながら、定期的に二人で話し合いができるようなスキームを考えています。

理念:僕がみたい世界

━━ 飯尾さんとは、約1年前に理念をつくらせていただきました。その理念(飯尾さんの場合は「まんなかにあることば」として納品)はこちらですね。


みんなが、
じぶんのだいじなものを
だいじにできるしゃかいと
なりますように。

━━ 改めて、この理念に込めた意味を考えてみて、いかがでしょうか。

そうですね、ほんと、純粋にこんな風になればいいな、って思っているんですよね。やっぱり、自分自身が長い間、母親の期待に応えようとしたり、世の中の価値観に染まったりして自分の大事なものがみえなかった時期がある。だから、その自分の経験を踏まえて、そういうことにならないように、という想いはあります。だけどそれよりも、僕、みんなが幸せじゃないと、幸せを感じられないんですよね

こうやって言うと、すごく偽善的に聞こえるかもしれないですが、この傾向って小さい頃からなんです。クラスで何かやっている時に、つまらなさそうだったり、仲間外れになっていたりする人がいると、どうしても放っておけなくて、解決をはかろうとする。あるいは、かなり平和主義なのか、ケンカが始まると、もうどうしようもなくやるせなくなって、泣きながらでも仲裁に入る。みたいなところがありました。

僕は、自分で言うのもなんですが、かなり視野が広いところがあるんですよね。集団の中にいてもいろいろと見回せてしまうし、その視野が社会レベルになっても、いろんな問題・課題が気になってしまう。

僕は、幸せの総量が1000あったとして、近くの10人が100幸せな状態よりも、自分が見えている100人の人がそれぞれ10幸せな状態の方が嬉しい、という指向性を持っています。だから、みんなが幸せな社会になって欲しいんですよね。

あなたを生きる意味

━━ 理念をつくって1年、飯尾さんの中でも、ご自分の生き方に対する理解が深まっているように感じますね。最後に改めて、飯尾さん、「あなたを生きる意味」とはなんでしょうか。

そうですね、そんなかっこいい言葉では言えないのですが、見ている世界のバランスを整えるですかね。理念のところで語ったように、僕自身は、何かが偏在している状況に対して、心穏やかでいられないようで・・・(笑)
自分の幸せのためにも、見ている世界の均衡づくりに挑戦し続けると思います。

━━ あと飯尾さん、理念を納品する際にお渡しした肩書きも、大変お気に入りですよね。

そうですね、名刺にもがっつり入れていますが、「だいたいくちだけ」という肩書きです。普通、年下の女の子に、こんな肩書きをつけられたら怒っても良さそうですが、これがお気に入りで、なんなら納品時に、これをもらった時が、一番泣けました (笑)

それまでは、自分はいろんなアイディアは思いつくけれども、実務や現場が不得手で、そういった自分にどこか劣等感や後ろめたさがあったんです。だけど、この肩書きをもらったときに、そんな「くちだけ」の自分を全承認してもらえた気がして、救われました。

━━ いやぁ、私もこの肩書きが好きですけど、まさかここまで気に入ってくれるとは思いませんでした。 名刺にも「代表取締役」って書かずに、「だいたいくちだけ」だけ書いてますよね。「だいたいくちだけ」って、一体誰やねん!みたいな(笑) だけど、こうやって、人には見えない視点で物事を捉え、アイディアを発想できることも、飯尾さんを生きる意味かもしれない、と感じます。今日も、楽しいお話をお聞かせいただき、本当にありがとうございました!

《 聞き手より 》
お客様であると同時に、大切な友人でもある飯尾さん。飯尾さんのイメージは、いつも瞳がうるうるしていて、ほおっておけない感じ(笑)。 きっと、誰よりも世界を見ていて、その世界のバランスをどうにか図りたくて、だけど自分の無力さも同時に感じて・・・。ご自身の中にある理想と現実のギャップに押しつぶされそうになりながら、なんとかいつも自分と世界のギリギリのバランスに生きている人なんだと思います。世界を変えていくためには、意識の高い1〜2割の人ではなく、それ以外の8割の人に届ける必要がある。それを教えてくれたのは飯尾さんでした。これからも、生けるバランスをご自身と社会の中ではかっていく飯尾さんのご活躍を、応援しています!


飯尾彰悟
Shogo Iio

1984年、群馬県生まれ。法政大学を卒業後、webサイト制作の会社に入社。社会人4年目の春にソニー生命保険株式会社に入社し、ライフプランナーとなる。3社目に人材育成企業の取締役を経験した後、2018年3月に株式会社イキカタを起業。家族は、妻と3人の男の子。
https://iki-kata.com/
 


CREDIT
Interview&Text:Yukiko Ohno
Photo&Edit:Maki Amemori

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